育て上げブログ

オンライン結

2018年09月18日

親子の関係を取り持つ「自由」のつくりかた


すっかり秋めいてまいりました。結支援スタッフのきたです。
台風、地震と続く天災で甚大なる被害に遭われたみなさまには心よりお見舞い申し上げます。

今回も実際にご相談いただいた方のエピソードを交えて、子どもたちの自立について考えていきます。
崩れてしまった親子関係を取り戻すために、私たちがどのように関わったのかまとめました。

”優秀”といわれる幼少時代。

ご紹介するのは、Sさんという女性です。私たちがお会いした当時16歳でした。

幼少期、Sさんは理想の子育てを体現したような存在でした。
「どうしたらそんなに良い子に育つの?」
「育て方を教えてください」
そんな相談が絶えないほど、お母さんの自慢の娘でした。

Sさんのご両親は有名大学を出て、有名企業でお勤めで、子どもも自分たちと同じような人生を歩んでほしい、歩んでいくものだと考えていました。そんな願いに応えるべく、Sさんは名の通った中高一貫校の進学を目指し、小学生のときから塾に通い、申し分ない成績を保っていたそうです。

つまずきは中学入試から

迎えた中学入試。模試の結果を見ても志望校はどれも合格圏内で誰もが安心して本番を迎えました。
しかし、滑り止めと思って受けた最初の学校でまさかの不合格通知。
落ちることなど考えてもいなかったSさん家族にとってそのショックは大きく、ふたを開ければ受験校すべてが不合格という結果に。

すぐに受け入れることなどできませんが、進学先を決めなければならず、公立校の進学を選択しました。

思うようにいかない中高時代

そんな状況でしたが、意外にもSさんは楽しそうに学校に通っていたそうです。
部活や新たな友人関係ができるタイミングですし、勉強は言わずもがな。学校生活に不自由さを感じることは少なかったようです。それなのに、徐々に成績は下がり、部活も辞め、帰宅時間も遅くなっていきました。

中学3年生の夏。
すでに入学当時のレベルから程遠い成績だったSさんは、親から言われるまま塾の特訓コースに通うようになります。
ある程度の学力を取り戻しましたが、高校受験では第一志望に落ち、結果、予定していない公立高校に進学することになります。

高校進学してからも素行不良に思える行動は続きます。
彼女は学校に行くふりをして、繁華街で時間をつぶすようになりました。友達関係も親の知らない友人たちとの付き合いが多くなり、とうとう無断外泊をしてしまいます。お母さんがそれに気づいたのは、しばらくして学校から欠席が続いている連絡をもらったときでした。

なぜそんなことをしたのか聞いてみても、声を荒げ会話が成り立たない。
しまいに校則違反を繰り返し、夏休み前には退学が決まってしまいます。
みかねたお母さんがSさんを連れて相談にいらっしゃいました。

親の焦りが子どもを追い込む

お話を聞きながら整理していくと、親子関係に不和が生まれたのは、中学時代にさかのぼりました。
大きなつまずきを経験したSさんが新たな環境で頑張ろうとする一方で、親からは「もっと勉強しなさい。じゃないと良い高校に入れないでしょ」と毎日のように言われ続けていたそうです。それが責められているように思えて少しづつ親と距離をとるようになっていったそうです。
高校受験の失敗がそれに拍車をかけ、責められ続ける家の中は安息の場所でなく、外泊や親が知らない人間関係に安心を求めるようになっていました。

中学受験後、Sさん以上に大きなつまずきを感じたのはご両親だったのかもしれません。
「このままでは私たちの理想から外れ、将来苦労するのでは」
「普通の学校生活に戻ってほしい」
そんな気持ちの焦りから「勉強しなさい」と声掛けを続けていたと、当時を振り返って話されていました。

親子関係を見直す

私たちがSさんのお母さんにお伝えしたのは総じて3つの点です
①親子関係を修復すること
②Sさん合意の「ルール」のなかで生活を律すること
③Sさんとズレたベクトルを整理すること

①はすでにここまで読んでくださった方なら分かる通り、まず、親子としてお話を進めるための「ゴール(目標)」です。
②、③はゴールに近づくために行う共同作業のようなものです。

「放任」から「自由」へ

まず、お母さんとSさんの間で”ルール”を作ってもらうことにしました。
ルールの内容は2つ
・門限を守り、反社会的なことをしないこと
・どうしても門限を守れない場合は事前に連絡して親に承諾を受けること

それって今までと違うの?と思われるかもしれません。
これまでのSさんの行動は「放任」状態でした。さまざまな問題行動が起きても、本人も親もそれを律することができていませんでした。そこで、小さな頃から当たり前だったルールを改めて確認してもらいました。
ルールを定めると、一定の範囲内での行動を求められますが、同時に、その範囲の中で「自由」を得ることができます。

縛りだけでは、子どもを窮屈にするだけです。
「ルールの範囲内で夏休み期間中で自由にしてよい」と親子で約束をしたのです。

そして、これとは別に、私たちとSさんの間で「3回破ったら親子で相談に来る」という約束をしました。
親子で相談に来ることはできたので、本人とお話しする機会を確保することで、ルールの修正やSさんの気持ちを整理する機会になると考えていました。

まずは「今」を見直す

そして、その機会は割とすぐやってきました。

親子で相談。当然、気分の良くないSさんに「最近、楽しいことはある?」と聞いてみました。
すると「インスタに写真をアップして”いいね!”をもらえるのがうれしい。認めてもらえたような気持ちになる」と答えが。
今っぽい答えですよね。見せてくれた写真からは、仲間たちとの時間を楽しんでいるのが伝わってきます。
続けて「仲間といると、なにも考えずに話せて、自分のことをわかってくれる」とも笑顔で話してくれました。

親にとって「このままでは子どもがどうなってしまうかわからない」と将来を悲観するばかりでしたが、一方、Sさんは「インスタが楽しい」と”今”を楽しんで生活しているようでした。考えていることや時間軸がずれていたら話がかみ合いませんよね。

Sさんの「将来」

そんな今を教えてくれたあと、Sさんは自然と自分の「将来」を話してくれました。
・”これからの自分の将来”が心配であること
・ファッション業界に興味があること
そして、親の考える将来像ばかり聞かされて、今まで自分の考えを話す機会はなかったと付け加えて話していました。

夏休みを「自由」に謳歌したことはSさんにとって大きな成長になったようです。曖昧だったファッション業界への気持ちは強まり、親へ「ファッション関係の学校に行きたい」と自分から話すようになり、そのために通信制高校への編入したいと親に告げることができました。
そのあとは、あっという間に話が進んだように思います。目的と道筋が納得できればきちんと向かう力を持っていたのですね。

いま、Sさんは高校3年生を迎え、親子で受験の準備をしています。まずは高校卒業…とひとつずつ、自分の望む将来に向かって歩き出しています。

「今」できることを積み重ねて「将来」につながる夢を叶える

親として、子どもの将来に不安は募るばかりです。でも、一度立ち止まって「今」を子どもと一緒に見つめて、考える猶予を持ってみてください。子どもたちはもう、自分の道を見つけようともっと前を歩いているかもしれません。逆に親の目線が先走っているかもしれません。

お互いの考えを知り、伴走するように子どもに寄り添うことで、親子ともに孤独にならずに進んでいけるはずです。

もし「子どもの将来に不安を感じたら」ご相談にいらしてください、いつでもお待ちしています。


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