育て上げブログ

2018年07月30日

もうひとつのエアコンのない世界


今年の猛暑は「エアコン」が私たちの生活や命を支える必需品か否かをクローズアップしています。

僕は必要である立場です。すでに多くの場所でありますが、学校でエアコンを設置するにあたり「自分たちの時代は」という議論には結論が出ています。
温度が異なるので、過去と比較しても意味がありません。

そもそも、30度を超える場所で物事に集中できるひとは稀だと思います。少なくとも僕には無理です。もっと言えば、何もしなくても汗が出てくる環境で勉強しても効果があるとは思えません。断続的に「暑いなぁ」と思うことだけでも思考が止まってしまいます。

ここ最近は、少年院という場に足しげく通わせていただいています。少年院の「中」で、在院者のITスキル形成や学習支援を行うようになり、具体的なかかわりのない少年院を見学させていただいたりもしています。

7月だけでも複数の少年院にうかがいましたが、猛暑により少年院の中であっても暑いです。学校のような空間に入らせていただくときは、ここにいる若者だけでなく、こんな環境で勉強しなければならない学生のことも考えます。

そこで僕が知らなかったことに出会いました。

どこの少年院に行ってもエアコンがありません。生活空間(衣食住)にもありませんでした。こんな空間で就寝できるのだろうかと思うほどに暑く、実際に寝られないひとたちもたくさんいるということでした。

ある法務教官がおっしゃっていたことが印象的でした。それは、この猛暑のため、在院者の命を守る上でもエアコンは設置したい。しかし、予算がない。予算がないだけではなく、刑務所や少年院という空間にエアコン設置となれば、少なからず反対、または快く思わないひとがいると思います。仕方がないです。

そんな趣旨のものでした。生活空間を体感したものとして、ここで寝る、暮らすというのは、想像を絶するものであり、命の危険すら感じるため、エアコン設置は必須だと考えました。少年院に設置するくらいなら小学校に、という意見もあると思いますが、この猛暑では「どちらも」そして「誰であっても」、命を守るという観点で考えるべきものだと思うのです。

そんな経験からすぐに、下記のニュースを見ました。
受刑者が死亡 熱中症か 居室に冷房なし 名古屋刑務所 | NHKニュース

そうはいっても、加害者と被害者という視点もあり、誰もがもろ手をあげてエアコン設置に賛成とはならないかもしれません。しかし、エアコンのない世界という場に足を踏み入れてみたとき、ひとは少しだけ異なる観点を獲得できるのだと思います。猛暑とエアコンに限らず、課題の場に身を置いてみるというのは誰にとっても重要なことだと考えます。

少年院は、ときどき、一般の方々の見学会などを開催されています。ウェブサイトがないこともありますが、ご興味があれば問い合わせてみてはいかがでしょうか。

理事長
工藤 啓


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