育て上げブログ

2018年03月02日

「待つこと数年」にならないための「待ち方」


山本賢司と申します。

広報担当から「意外と読まれてますよ」と言われて緊張し始めてます。どうぞお手柔らかに……。

さて、前号では、「どうして背中を押すときに、選択肢を3つ提示することを推奨しているか」について書かせていただきました。今回は、「待ち方」について書かせていただきます。

ちなみに、この「待ち方」については、個人的には非常に大事なテーマです。それは、特に保護者からのご相談のなかで、知人などから「とりあえず様子を見ながら待ってみたら?」とアドバイス(?)があり、ノーアクションで待ち続けた結果、数年を経ても状況は変わらず…というケースをお聞きすることが多いからです。

若者が自ら一歩を踏み出すために、周りが「待つ」ことは必要かつ大切なことなのですが、「待ち方」を意識しておかなければ、あっという間に「待つこと数年」になってしまいます。

なぜ「待つこと数年」が起きてしまうのか

「待つこと数年」が起きてしまう理由の一つは、「いつまで」が曖昧になっていることです。
若者と面談を通じて、「アルバイトに応募する」というところまでは、合意できたとします。しかし、実際にやってみると、不安になり、応募できないこともあります。

これは悪いことではありません。
「応募しよう」と思っていながらも動けないことには、当然、何か理由があるからで、応募できなかったという結果を踏まえて、次にどうするかを、また考えていけば良いだけだからです。

”ダメだったら、ダメだった理由を踏まえてやり直す”
このシンプルなことをスムーズに繰り返すために、「いつまで」の目安を設けておくことがポイントになります。その期日が、このことを話題にして振り返る機会となるからです。アルバイトの応募であれば、「じゃあ、1週間後に、どうだったか確認させてもらうね。もちろん、それより早く応募が済んだら、教えてね」というような形で面談を締めくくっておくわけです。(場合によっては、「応募できなかったらできなかったで今回は気にしないでいいからね」と逃げ道?になる声がけもしておきます)

ちなみに、約束した期間中は、若者から話題にすることがない限り、支援者から話題にすることはしません(そうすることも面談で伝えます。会うたび、毎日のように聞かれていては、若者もウンザリしてしまいますので、気になって気になって仕方なくても、約束したからには、信じて待つこと(そして、約束の期日を絶対に忘れないこと)が、この期間の支援者の仕事です。

 「いつまで」を決めておくと何が良いか 

「いつまで」を決めておくことの良さは、「お互いに、次にこのことを話題にして良いタイミング」が明確になることです。

応募できた!というポジティブなときには若者も積極的に教えてくれます。応募できなかった……という、若者からすれば言いにくい状況のときには、1週間後に支援者から声をかけるので、言いにくいながらも、「実は…」という話をしてもらいやすくなります。応募できていれば次の作戦会議(面接対策など)に進みますし、できなかった場合であれば、「応募しよう…でも…」と葛藤しながら若者が向き合ってくれた課題について話し合い、整理がついたら、あらためてチャレンジしてみることと、振り返る日を決めておく…ということを繰り返していきます。

保護者の方からは、「期限を決めるような話は、プレッシャーにならないのですか?」と質問されることがあり、「プレッシャーに感じると思います」とお答えしています。だからこそ、期限を定める場合には一定の信頼関係が重要ですし、また、一方的に期限を定めるのではなく、合意/約束とすることがポイントになることをご説明します。そのうえで、もし親子間で期限を定めるような話をしづらいようであれば、まず目指すべきは、少しでもその話がしやすい関係や状況をつくることであるとお伝えします。「どうせダメだったら責められるだけだ」と若者が感じているままでは、怖くて約束できません。うまくいかなかったとしても、受け止めて、解決方法を一緒に考えてくれるだろう…という安心感があればこそ、今後のことを話し合い、約束をしてもらいやすくなります。

 しかし、なぜ「いつまで」は決めづらいか

 「いつまで」が決まっていないと長期化しやすいことは分かっていても、そう簡単にいかないからこそ悩ましいですよね。それは支援者も同じです。アルバイトの応募について話し合えるくらいの信頼関係ができていれば話題や期限に触れにくいということはありませんが、信頼関係が浅く、若者にとって葛藤が強い内容であればあるほど、「これからのこと」は、触れにくくなりがちです。「もう来なくなってしまうのでは……」ということが心配で、「これを話題にしてしまって大丈夫かな…」というブレーキがかかっているわけです。このことから考えると、保護者相談で「待つこと数年」というケースをお聞きすることが多いのは、「これからのこと」は、若者に強い葛藤があることはもちろん、保護者の方にとっても強いストレスのかかる話題で、ブレーキがかかりやすいからだと考えています。誰がいけないということではなく、できれば触れたくない……という相互作用が、「このこと」を話題にしづらくしているわけです。

……ということは、まだ、その話題に触れて大丈夫だと思える何かが足りないわけですから、それが何であるかを特定しつつ、大丈夫だと思えるようになる準備を整えていくことが支援のテーマになります。これが、「待ち方」のもう一つのポイントになってきます。

 ノーアクションで待たないために

期限を設けにくい話題は、そもそも触れづらかったり、ストレスの強いものであることが多く、どうしても避けたい心理が働きます(僕もいま、この原稿の〆切が話題になることが恐ろしくて仕方ありません)。できれば「なかったこと」にしてしまいたくもなります。あるいは、「気がついたら解決していてほしい」という気持ちにもなります。

この心理が、冒頭で強調した「ノーアクションで待つ」につながる要因です。とはいえ、直面している課題によっては、この心理を一人でクリアーすることはとても難しいことです。ですから、「ちょっともう、自分1人じゃ無理!」と思われた場合には、ぜひ支援を活用ください。

ちなみに、例えば、アルバイトの応募については話題にしづらい場合には、何をどう「待つ」と良いでしょう。僕であれば、いったん、「すぐ応募すること」は待ちます。ゆくゆくは応募してほしいので、相手によっては、「僕はそう思っている」ことは前提として伝えたうえで、「でも、まだしないでいいと思っている」ことや、その理由も伝え、まずは、ざっくばらんに話せるようになるよう、一緒に過ごすことを優先します。その間に、仕事にも結びつきそうな「好きなこと」や「得意なこと」を探して、「**さんは手先が器用なんだねぇ」などと、それとなく伝えていきます。働くことについてどう考えられるようになっているかも会話の中で探ります。応募することは待ちながらも、こういったことを積み重ね、お互いの準備が整ってきた頃合いで、応募に関する話題を切り出していきます(準備が整ってくると若者から切り出してくれることも多いです)。待ち方や話を切り出す自信が持てないときには、先輩や仲間に相談もします(一人の若者に複数の支援者が関わる仕組みのメリットですね)。

親子間で「これから」のことを待つとき、「いつか何か始めてほしいと思っているけれど、いまじゃなくていいと思っているよ」と伝えて待つのか、「1ヶ月くらいゆっくり休んだら、一度、話し合おうね」と伝えて待つのか、半年は何も言わずに見守ると決めたうえで親御さんが先に相談に行ってみるのか、どれが正解ということはありません。やってみてうまくいったことが正解で、そうでなかったことは、そのタイミングでは合わなかったというだけです(失敗ではありません。同じ方法が違うタイミングだと有効なこともあります)。正解がないだけに、見直しをするタイミングが必要で、そのためにも、「いつまで」を決めておくことが動きやすさにつながります。

親としてできること

保護者の方には耳の痛い情報となりますが、当法人が実施した調査(厚生労働省 平成25年度セーフティネット支援対策事業[社会福祉推進事業]による、「ひきこもり、矯正施設退所者等みずから支援に繋がりにくい当事者の効果的な発見・誘導に関する調査研究」)では、保護者が「なんとかなる」と考えて積極的な行動を起こさないでいるケースほど、子どもの困難状況が長期化するという傾向が確認できています(図2-4-3)。

 

一方で、同調査では、若者が最初に支援につながるときの情報源は「親の説明」が最多となっています。

特に親子間で「これからのこと」は話題にしづらい場合が多いかとは思いますが、日本社会においては、家族(あるいは、最も身近な人)の役割が重要であることを示しているデータと考えています。若者達の話を聞いても、「ひどい態度をとっていたけれど、あのとき、親が動いてくれなかったら」という声が多いです。もし親として一人で悩みを抱えてらっしゃるようでしたら、親も子も少しラクになるために、一度、説明会・相談会にお越しください。いまからできることを、一緒に考えていきましょう。

…と、若者の話から親御さんむけの話に変わったうえに、やっぱり最後はCMっぽく終わってしまいました(苦笑)。セミナーや原稿でお伝えできることはどうしても一般論になりがちなので、この終わり方にならざるを得ないということで、お許しください!

理事・事業戦略室長
山本賢司


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