育て上げネット

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2017年11月30日

被支援の若者、支援者になる。 


三男と四男の双子が意図的に入れ替わる術を身に着けたため、間違って無罪の側を罰してしまうことが増えた工藤です。「やった」側がニヤニヤと「やってない」側が怒られているシーンを見ると、僕のわが子を見分けるチカラのなさにがっかりします。

支援者と被支援者の関係性がときおりトピックスにあがります。関係性というのは難しくて、支援者と被支援者の関係性をポジティブに考える両者と、そうでない両者、そしてどちらか一方がポジティブでもう一方がネガティブであったり。また個人と集団、そのシーンによっても変わります。

広義の対人支援組織には、被支援側であったひとが支援者として活躍されているところと、そうではないところがあるようです。若者支援団体という立ち位置から見れば、支援を受けていた若者が支援者という立場、職業として活躍することになります。団体によっては職業というよりライフワークやボランティアという言葉の方が馴染むこともあるかもしれません。

僕が知っている範囲では、結構、被支援者から支援者という関係性の変容を意図的に起こしているところと、そうでないところがはっきりしています。特に被支援者が“被雇用者”という形で所属しているかどうかはわかりやすいため、はっきりしているように見えるのかもしれません。

ただ、そういう関係の変容にはさまざまな形があり、必ずしも直接的な対人支援という立場に限りません。11月26日に、第七回大阪マラソンが開催されました。寄付指定団体として採用されている育て上げネットとしては4年目の参加となり、僕自身もチャリティランナーとして応援のご寄付を頂戴することができ、チャレンジさせていただきました。

寄付者や沿道の応援、職員の声援により、苦しい距離である30km-ゴールまでも何とか走り切ることができました。タイムという結果も大事かもしれませんが、“誰かに応援されて、誰かのために走る”という経験は、何物にも代えがたいかけがえのないものであると再認識しました。

そんな大阪マラソンで、過去に支援プログラムを利用していた若者が4名もチャリティランナーとしてフルマラソンを走り切ってくれました!

社会からリタイアしたら二度と戻れないと悩む若者のために立ち上がったokamotoくんは、初めてのフルマラソンを素晴らしい速さで駆け抜けました。育て上げネットへの恩返しとジョブトレ生のよりよい支援を願ってちぃちぃは今年も清々しい笑顔で完走してくれました。

若者が社会で活躍できることを願うなおくんは四年連続の挑戦で、自分のペースを崩さず、42.195kmを走っても涼しい顔で“それほど疲れてません”と話してくれました。同じようにひきこもり状態で悩む若者のためにとtakanoくんは初めてのフルマラソンを走破しました。

おそらく、いまの彼らだけを知るひとは、彼らが過去に悩み苦しんだ経験があるとは思わないでしょうし、気づきもしないと思いますが、寄付を集めてフルマラソンを走るチャリティランナーは、チャレンジするだけでも大きな決断を必要とします。そのうえ、周囲に挑戦することを伝え、私たちの法人への寄付を集め、フルマラソンを走ります。普通の意思決定レベルではありません。

そんなことを「走りますよー」と爽やかに宣言し、プライベートの時間を使って練習を行い、働いて疲れていても寄付を集めようと情報発信やお願いをする姿は、一緒に大阪を走った仲間として尊敬し、法人代表として涙が出るほど感謝し、大会終了後に乾杯する友人としてよき思い出を共有しています。

彼らは育て上げネットで支援を受けた被支援者であることを隠すこともなく、むしろ、その経験を恩返しという言葉や、同じような経験をしているひとたちのためにという社会的意義のため、寄付集め/ファンドレイザーとしての支援者になってくれました。

被支援者と支援者の関係性は、直接的に支援を受ける側と支援する側でわけられ語られがちですが、そうではない新たな関係性やバランス、一緒に苦楽を共にする仲間という関係性もまたひとつの在り方であることを教えてくれました。

大阪マラソンが無事に終わったいま、すべてのチャリティランナーに感謝するとともに、ジョブトレ卒業生として走ってくれた四名の若者、そして、チャリティランナーを支え一緒に寄付を集めてくれたり、寄付をしてくださった方々に、心より感謝申し上げます。

また来年の同様の機会をいただけるのか現時点ではわかりません(年明けに発表と聞いています)が、もし機会があれば僕も彼らもまた走る意思は固めていますので、ともに若者のために走るチャレンジャーをご検討ください!

 

育て上げネット
理事長/工藤 啓


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