トピックス 若年無業者の実態

2016年01月27日

「自責の念…」正社員を早期離職
~正規経験×20代前半の若年無業者~


『若年無業者白書2014-2015 –個々の属性と進路における多面的分析-』【第1章】において、「年代」「職歴」「無業期間」を中心に群分けして若年無業者の実態を理解する取り組みを行った。【第1章】から、20代前半の無業の若者で、正規の職歴がある若者についての"来所目的"に関するデータを引用し、彼らの抱える課題について記述していく。

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20代前半の無業の若者で、正規職の経験がある者(以下、"正規経験のある20代前半無業者"と表記)とはどのような若者だろうか。ここには、新卒採用されて正規の仕事で働き始めたものの、早期離職にいたった若者が多く含まれている。他の職に転職した若者がいる一方で、離職後に無業状態となっている若者もいる。早期離職に至り現在も無業である若者は、どのようなことに課題を抱えて支援機関を来所しているのだろうか。

図1-10-1は、来所目的について、〈正規経験のある20代前半無業者〉と〈正規職歴全体〉・〈20代前半全体〉を比較したものである。〈正規職歴全体〉の数値とは、若年無業者を職歴ごとに群分けした場合の、〈正規職歴〉無業者全体を指す。〈20代前半全体〉の数値は、若年無業者を10代・20代前半・20代後半・30代に群分けした場合の、〈20代前半〉無業者全体を指す。

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「働ける自信をつけたい」「社会性を身につけたい」「コミュニケーションへの苦手意識を克服したい」「漠然とした不安を解決したい」が〈正規職歴全体〉より高い。離職した原因を社会性のなさ・コミュニケーション能力の低さにあると考え、「離職したのは自分が至らなかったためである」と結論付けて、自責の念に駆られている傾向が支援現場で見受けられる。20代前半では離職した職場が初職であることも多く、離職という経験を相対化・客観化して考えることが難しいのかもしれない。「周囲の人は働いているのに私は働いていない」という心理もあるのだろう。こうした実態を反映して、上記項目の数値が高くなっているとみられる。
仕事において何らかのつまずきを経験して早期離職にいたった者も多い。「社会性を身につけたい」が高いことから、職場のつまずきへの対処法を支援として求めていることが分かる。
早期離職者への就労支援の方向性は以下のようなものである。働き始めた後、早期離職を繰り返さないためにも、離職原因を分析・整理して課題を明らかにし、その課題へ対策を立てることが支援として求められる。離職原因については、環境を変えることで解決する課題(たとえば、業務過多・パワハラ・職のミスマッチなど)、本人が成長することで解決する課題(たとえば、社会人としての心構えや仕事の基本的なスキルなど)を整理する必要がある。ただ、社会人経験が乏しい・最初の職場であったために他の職場を知らないという状況のもと、課題の整理をひとりで行うのは難しいケースが多い。そのため、環境を変えることで改善を図る課題・社会人として成長しないといけない課題、これらを支援者とともに整理することが求められる。

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本記事では「正規経験のある20代前半無業者」の抱える課題について明らかにした。ただ、職場でのつまずきとは何なのかを明らかにするには、若年無業者の退職理由をみる必要があるが、本記事では記述しきれなかった。『若年無業者白書2014-2015』において分析・解説を行っているので、ぜひこちらをご覧頂きたい。
『若年無業者白書2014-2015 –個々の属性と進路における多面的分析-』にて、若年無業者の実態を明らかにするため、さまざまな観点から調査・分析を行った。【第1章】では、若年無業者を「年代」「職歴」「無業期間」の3つの要素を用いて、その特徴や注視すべき点を順に見ている。定量的なデータをもとに、若年無業者のニーズ・課題・受けるべき支援がどのように変わるかを支援現場で得られた経験もあわせて解説している。【第2章】では、どのような無業の若者が支援を経て進路決定するのか・支援を経ても支援中断するのはどのような若者なのか、来所時シートと支援データから定量的に分析し考察している。支援の結果、どのような進路決定となっているのか、についても分析した。【第3章】では、育て上げネットの自主事業「ジョブトレ」と、行政連携事業「地域若者サポートステーション」を比較し、進路決定という支援の効果について分析した。

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