2022年02月01日

2021年【最新】若年無業者数は75万人


2021年 若年無業者数は、75万人


2022年2月1日に「労働力調査(基本集計) 2021年(令和3年)平均(速報)結果」が発表された。若年無業者数は、一般に本調査の「①15歳~39歳の、②非労働力人口(就業者、完全失業者以外の者)のうち、家事も通学もしていない者」として定義される。注意が必要なのは、完全失業者を含んでいない点で、つまり仕事が無くて求職活動をしている人はここでいう若年無業者数に含まれない。

その定義に基づいて算出される若年無業者数の推移は以下の通りである。2021年の若年無業者数は、75万人で、2020年から2021年にかけては、12万人減っていることが判明した。

なお、集計は以下の表をもとに算出した。労働力調査基本集計 第I-2表「就業状態・従業上の地位・雇用形態(非農林業雇用者については従業者規模)・雇用契約期間・主な活動状態・農林業・非農林業・世帯の種類・世帯の家族類型,年齢階級別15歳以上人口」

 

コロナ禍によって若年無業者数は増えたのか?


上記グラフを見ると、若年無業者数は2020年に大きく増え(+13万人)、その後2021年に元に戻った(-12万人)。

これだけ見ると、2020年にコロナ禍によって若年無業者が大きく増え、その影響が2021年には落ち着いてきた、と思うかもしれない。しかし、これには2020年の特殊な事情が絡んでいると私たちは考える。そのために、まずはより細かく月別の推移を見よう。

政府統計の総合窓口e-statでは、見たいデータを指定して、好きなグラフや表の形でダウンロードすることができる。上記「労働力調査」の結果を月別に抽出してダウンロードしたグラフをそのまま下記に掲載する。

月別で見ると、「2020年3月―5月」に特に「15‐19歳の年齢層」で急増していることが分かる。この期間と言えば、全国的な一斉休校があった期間だ。この期間に調査票が届いた中高生等の学生の中には、「仕事もしていないし、(今は)通学も家事もしていない」と回答する者が出てくるだろう。

先に述べたとおり、若年無業者は「非労働力人口(就業者、完全失業者以外の者)のうち、家事も通学もしていない者」と定義されている。先のように回答した学生は、若年無業者とカウントされる。

このように2020年の若年無業者の増加は、一斉休校による影響なのか。それを推測するのに使用できる統計データが同じ労働力調査に存在する。それは、同じ世帯員に対して2か月続けて同じ調査を行い、前月と今月で状態がどう変わったかというデータである。

当該データである労働力調査基本集計「第I-7表今月及び前月の就業状態・農林業・非農林業・従業上の地位・雇用形態(非農林業雇用者については従業者規模),年齢階級別15歳以上人口」を見た結果、詳細は省くが、要約すると以下のようなことが分かる。

・2020年2月~4月にかけて、「主に通学」していた人の多くが「若年無業者」となり、代わりに「主に通学」している人が減っている。

・2020年4月~6月にかけて、「若年無業者」だった人の多くが「主に通学」となり、代わりに「若年無業者」が減っている。

 

つまり、2020年の若年無業者の増加は、3月―5月の期間の増加に起因し、しかも「主に通学」していた人の変化による影響を受けているということで、統計の見かけ上増えているように見えている、ということが言える。

「2020年に急増し、2021年に戻った」というよりも、「元々の若年無業者数はあまり変わらずに推移している」という形で理解した方がいいと思われる。

 

2021年若年無業者数はコロナ前(2019年)と同水準だが、長期的には上昇傾向


先ほど見たとおり、2020年には例外的な事情もあった。一旦脇に置いて考えてみよう。

コロナ禍以前(2019年)の若年無業者数は74万人であった。

2021年は75万人。コロナ禍以前の水準とほぼ同水準と言える。

コロナ禍によって失業者は確実に増えたが、若年無業者はそこまで増えていない。若年無業者は『子供・若者白書』(内閣府)にもあるように、「病気やけが」「自信がない」あるいは簡単には答えられないのであろう「その他」の理由で、働くための一歩が踏み出せないでいる。今後雇用環境が改善していき失業者が減っていったとしても、「無業」の問題は解決しない。

下記は、若年人口に占める若年無業者の割合である。(例外の2020年を除いて)割合としては、上昇傾向にあることが分かる。

 

コロナ禍によって、働くこと、人とつながること、心や体の健康、様々な影響が出ている。

「働きたくても働けない」若者の存在も、以前よりももっと気が付きにくくなるかもしれない。

しかし、そのもっと手前に、コロナ禍以前からあり続けた、若者の孤立やつまづきをそのままにしてしまう社会、若者の働くや社会参加を遠ざけてしまう社会、そういった問題にきちんと向かい合っていかないとならない。

 

(執筆:育て上げリサーチ)

「若者と社会をつなぐ」育て上げネット – 東京都認定の若者支援NPO (sodateage.net)

 


育て上げネットでは、若者の問題を個人的問題に帰結せず、社会全体で解決すべきであるという認識を広め、セクターを超えた課題解決のための担い手を増やすことを目指しています(若者支援の「生態系創出」と呼んでいます)。

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