トピックス 若年無業者の実態

2015年06月10日

30代無業者を支える保護者の8割が高年齢者
~若年無業者の家計に関する定量データに基づく将来の生活困窮リスク~


無業の若者の家計は父母によって支えられている場合が多い。無業者の年齢が30歳を超えてくると、家計を支える父母の高年齢化が進む。家計を支える者の収入が減少してくると、従来の生活の維持はますます困難性を極め、当事者が抱える課題への切迫感が高まってくる。また、社会的にもこの問題は深刻である。というのは、生活困窮が将来現実のものとなれば生活困窮者への公的な支出が増大し、社会的負担が増加することになるからだ。

本トピックスでは第二弾「若年無業者白書」を作成していく中での新たなデータに基づき、若年無業者の実態にせまる。

若年無業者の家計を支えているのは誰なのであろうか。
図「家計の支え手続柄」は若年無業者の家計の支え手の続柄を明らかにしたものである。図「家計の支え手続柄」では無業者の年齢ごと(5歳区切り)で家計の支え手の続柄をみている。20歳~24歳において「父母」が家計を支えている割合が92.8%となっており、25歳~29歳の90.0%、30歳~34歳の88.1%と、およそ9割において家計の支え手が「父母」となっている。35歳以上になると割合が下がるが、それでも77.1%が「父母」により家計が支えられている。

このように、無業者の年齢により多少異なるが、多くの場合、若年無業者の家計は「父母」によって支えられている。

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では、家計の支え手の年齢はどのように推移するのか。
図「家計の支え手の年齢」は、家計の支え手が「父母」である場合の、支え手の年齢を明らかにしたものである。図「家計の支え手の年齢」から、無業者の年齢が進むと家計の支え手である父母も高年齢化することが読み取れる。無業の若者が20歳~24歳において、支え手である父母の年齢は、50歳代が64.6%、60歳代が21.7%である。30歳を超えると家計の支え手も年齢が上がり、30歳~34歳において50歳代が19.3%に減少、60歳代が68.1%に増加、さらに70歳以上も12.6%占めるようになる。

このように、無業者の年齢が上がるにつれて、家計の主な担い手である父母も年齢を重ねて高年齢化する。

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家計の支え手の年齢が60歳を超えると、定年退職した場合には収入が大きく減少することになり、雇用を継続する場合にも雇用形態の見直しにより収入が減少する場合が多い。家計の支え手が働いている場合には、無業であってもなんとか生活が維持できていた。60歳を超えて収入が減少する、あるいは65歳を超えて年金生活になる中で、従来の形で維持できていた生活は変化せざるをえない。家計の支え手がいなくなるということ、こうしたことも現実味を帯びてくる。将来の生活困窮リスクを「現実にありうるもの」として受け止め、それに対処する必要性・緊迫性が高まってくる。

将来の生活困窮リスクへの対処する必要性が高まったからといって、「なるべく早く働き始めよう」という支援方針をとるのは必ずしも容易なことではない。一般に、当事者の年齢が上がり、無業期間が長くなってくると、支援の困難度が上がる。すなわち、当事者にとって働き始めることのハードルが高くなる。
こうした状況を考えると、支援が必要な者がなるべく早く支援機関につながる、ということは非常に重要である。

無業者の家計を父母が支えているということは、父母が将来の貯蓄(高齢になって以降のための貯蓄)を今切り崩しているということである。これはすなわち将来の生活資金の減少を意味し、高齢者になってから貧困状態に陥る可能性もある。
生活困窮者が増加すれば社会保障など公的な支出も増加することになる。支え手である父母の高年齢化という問題は当事者のみの問題ではなく、社会負担の増加の可能性があるという点で社会の問題でもあるのだ。

政策立案・若者支援の制度設計のためには、若年無業者の実態についての定量的データ・エビデンスを積み上げていく必要がある。第一弾「若年無業者白書」では追求できなかった点を第二弾「若年無業者白書」で明らかにしていく。

執筆:育て上げリサーチ
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