2020年05月31日

【2020年4月】若年無業者・失業者の全国データ


若年無業者・失業者の統計データ(2020年4月)


2020年5月29日に「労働力調査(基本集計) 2020年(令和2年)4月分結果」が発表された。

88か月ぶりの就業者数の減少や、非正規労働者の減少や休業者の急増が多く報道されている(共同通信「非正規労働97万人減、過去最大 新型コロナ緊急事態宣言が影響」

一方、失業率に関しては、季節調整値で0.1%の上昇にとどまり、そこまで大きな増加は見られなかった(日本では3月末までの契約が多い影響で毎年4月は失業者が増える傾向にあるが、そういった季節変動の影響を調整したのが「季節調整値」である)。

 

全体としての傾向は述べた通りだが、若者への影響はどうだろうか?

以下に、若年失業者(現在仕事がなく、求職活動をしている人)と若年無業者*の最新状況を概観する。

*若年無業者数は、一般に労働力調査において「非労働力人口(就業者、完全失業者以外の者)のうち、家事も通学もしていない者」として定義される。つまり、若年無業者は若年失業者には含まれない。

 

先に結論を述べると以下の通りである。

 ① 15-24歳の失業率は 2020年3月から1.1%上昇(季節調整値)

 ② 15-24歳の失業者は 26万人33万人7万人(2019年4月と比較)

 ③ 15-24歳の無業者は 22万人28万人以上6万人以上と推計(2019年4月と比較)

 ④ 25-34歳の失業率は 2020年3月から0.2%上昇(季節調整値)

 ⑤ 25-34歳の失業者は 39万人44万人5万人(2019年4月と比較)

 ⑥ 25-34歳の無業者は 35万人36万人1万人(2019年4月と比較)

 

表にまとめるとこうなる。

   失業者数(前年同月比)  失業率(前月比)  無業者数(前年同月比)
 15-24歳  +7万人  +1.1%  +6万人以上
 25-34歳  +5万人  +0.2%  +1万人

 

 

 

15歳~24歳が最も失業・無業への影響を受けている世代


15歳~24歳は高校・専門学校・大学等に籍を置いている者が多い年齢層である。

学生の経済面での影響は、アルバイトの減少による打撃が多く報道されている。

一方、失業者・無業者は、学校に在籍していない(厳密には「通学」していない)人たちのうち、仕事をしていない人のことを指す。

【失業者】

調査の表I-2によると、4月の失業者数は、33万人(男性18万人、女性14万人*)であり、2019年4月の26万人と比較すると、7万人多いことが分かる。これは失業率に換算すると、4.2% ⇒5.5%となる。

 *元調査は各集計ごと四捨五入しており、集計別と合計値が一致しないことがある。

また、2020年3月時点の失業者数は25万人であり、この1ヶ月で失業者が8万人増えたことが分かる。これは失業率換算(季節調整値)で1.1%の増加となる。

失業者や失業率の増加は、15~24歳の世代で最も影響が大きいことが同調査の発表を見てもわかる。

 

【無業者】

調査の表I-2によると、4月の無業者数は、91万人(男性48万人、女性42万人)であり、2019年4月の22万人と比較すると、なんと約70万人も多い。

 

若年無業者数の統計上の問題


15-24歳の無業者が去年と比較して70万人も増えた!と驚くかもしれない。

しかし、これは統計上の問題(欠陥とも言える)である。増えた原因は恐らく「休校」だと考える。

この度の一斉休校のような事態が起こると、調査票が届いた学生は、「仕事もしていないし、(今は)通学も家事もしていない」と回答する者が出てくるだろう。

先に述べたとおり、若年無業者は「非労働力人口(就業者、完全失業者以外の者)のうち、家事も通学もしていない者」と定義されている。先のように回答した学生は、若年無業者とカウントされてしまう。

これでは、正確な若年無業者数が把握できない。(なお、毎年内閣府から発表される「子ども・若者白書」でもこの労働力調査のデータを参照している。2020年の若年無業者数を、2021年の発表においてどのように推計し、扱うのか気になるところである。)

 

その中でも、可能な限り若年無業者数の算出を試みてみる。

要は91万人のうち、何人が本当は学生で、何人が学校にも属していない無業状態なのか、である。

 

2020年4月の通学者(「仕事を少しもしなかった者」のうち、「通学している」と回答した者)は、調査上は511万となっている。

この511万人の妥当性を確認するため、過去をさかのぼってみる。

2019年4月の通学者は574万人。2018年4月の通学者は、602万人。2017年4月は、623万人。

この通学者の減少は、近年より多くの学生がアルバイトしていることから説明できる*。

このトレンドに従えば、2020年4月の実際の通学者は574万~550万人程度と見込まれる。

つまり、574万~550万人と511万人との差分である、39万~63万人が通学者と想定される。

91万人中、通学者が39万~63万人含まれているとすれば、無業者数は、28万~52万人となる。

 

ここで、2019年4月の若年無業者数に戻ってみよう。

15~24歳の若年無業者は、2019年4月に22万人だった。それが、2020年4月には、28万~52万人と増え、少なく見積もっても6万人増加していると考えられる。それどころか、倍増している恐れもあるのだ。

無業者数の変化の正確な把握は、一斉休校の解除や、文科省「学校基本調査」結果の公表(例年通りならば8月予定)等である程度詳細が見えてくると考えられるため、それらの結果を注視したい。

 

*アルバイト学生の増加を示す調査結果

全国大学生活協同組合連合会「第55回学生生活実態調査」

 

25歳~34歳の失業への影響も大きい


【失業者】

調査の表I-2によると、4月の失業者数は、44万人(男性26万人、女性18万人)であり、2019年4月調査の39万人(男性20万人、女性19万人)と比較すると、5万人多いことが分かる。これは失業率に換算すると、3.4% ⇒3.9%となる。特に男性の失業者が増えている。

また、2020年3月時点の失業者数は42万人であり、この1ヶ月で失業者が2万人増えたことが分かる。これは失業率換算(季節調整値)で0.2%の増加となる。

失業者や失業率の増加は、15~24歳の世代に次いで影響が大きいことは先ほど掲載した表の通りである。

【無業者】

4月の無業者数は、36万人(男性21万人、女性15万人)であり、2019年4月調査の35万人と比較すると、1万人増である。

現時点で顕著な増加は見られていないことが分かる。

 

新たな「就職氷河期」を生まないために


日本においては、景気後退があった際には、既存の雇用維持が優先され、新たに労働市場に入る若者が入りづらい構造になっている。

さらに、その無業・失業状態、あるいは非正規雇用がそのまま固定化されやすいというのも研究から明らかになっている。

その構造の下に、この度の新型コロナウイルスの影響は、見てきた通り、若者の「働く」にも大きな影響を及ぼしている。

私たちが支援する若者の中にも、「ひきこもり状態を脱し、いよいよ仕事を探すつもりだったところ、また外に出られない状況になってしまった。家族関係が悪く、家にいるのが辛い。」など苦しい声を上げる若者がいる。

今後の先行きは不透明だが、「若者と社会をつなげる」をミッションとする団体として、少しでも多くの若者とつながり続けると同時に、学校、企業、地域など様々なところで若者に寄り添ってくれる人が増えるよう、活動を進めていきたい。

 

現在、その一つの形として、若者支援を行うキズキグループ、D×P(ディーピー)と共同で、クラウドファンディングを行っています(~6月22日)。

よろしければ寄付や拡散などの形で、お力添えください。

こちらから⇒【#働くを取り戻す】コロナ時代の若者応援プロジェクト

 

 

(執筆:育て上げリサーチ)

 


育て上げネットでは、若者の問題を個人的問題に帰結せず、社会全体で解決すべきであるという認識を広め、セクターを超えた課題解決のための担い手を増やすことを目指しています(若者支援の「生態系創出」と呼んでいます)。

その一環として、当サイト「育て上げリサーチ」では、若者の現状や若者就労支援について、データに基づく情報を広く一般に届けることで、より多くの人に若者の問題やその支援について関心を持って頂きたいと考えています。そのため、普段若者の支援に関わる方のみならず、「広く社会課題に関心がある」「若者を取り巻く環境を知りたい」といった市民・企業・行政・大学等研究者の方々も読者として想定しています。


 

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