育て上げブログ

2018年03月14日

家から出ないひきこもり状態から、最初の一歩を踏み出すには、勇気と覚悟が必要だった。


ジョブトレ・ITコース座談会(その1

ジョブトレ・ITコースに参加したきっかけ

土曜日の午後、立川市にある育て上げネット本部に集まったのは、ジョブトレ・ITコースの卒業生たち。
現在、社会人である彼らは、ジョブトレ(*1の卒業生親睦会(*2にかけつけてきたのです。
今回は、親睦会までのお時間をいただいて、ジョブトレ・ITコースについてざっくばらんに語っていただきました。

左から 岩下 明夫(いわした・あきお)さん 36歳 ジョブトレ・ITコース第4期卒業
安富 仁志(やすとみ・ひとし)さん 30歳 ジョブトレ・ITコース第3期卒業
中村 健(なかむら・けん)さん 21歳 ジョブトレ・ITコース第5期卒業
村木 昌司(むらき・しょうじ)さん 22歳 ジョブトレ・ITコース第6期卒業
黒川 武(くろかわ・たけし)さん 31歳 ジョブトレ・ITコース第6期卒業

 

全員(入って来るなり)おぅ、ここ、久しぶり。懐かしいね。

——ここは、みなさんがITコースを受講していたPCルームですからね。
——今日は、ジョブトレの卒業生親睦会が開かれるまでのお時間をいただきましたので、席についていただいて、お菓子でも食べながら、ジョブトレのITコースについて、お話をお聞きしたいと思います。

「IT業界で職に就けるなら、がんばってみたい」

——まずは、簡単にジョブトレ・ITコースに参加したきっかけを教えてください。

写真
岩下 明夫(いわした・あきお)さん 36歳
ジョブトレ・ITコース第4期卒業
高校中退後、親の仕事を手伝っていた。コネクションズかわさき(神奈川県川崎市の地域若者サポートステーション)を経て、ジョブトレに参加。その後「可能性があるならIT業界を目指したい」とITコースに参加。現在は、IT企業にて通信テスト等に従事。

岩下 川崎市の支援機関でジョブトレを紹介されて、ジョブトレに通うことになりました。3カ月の若者就労応援パッケージ(*3に参加したんですが、終了する時期を迎えても、どうしてもすぐに仕事をする気になりませんでした。 そんなときに、スタッフから、「だったら、ITコースに参加してみませんか」とお誘いいただいたのがきっかけです。 知り合いの議員さんのところでアルバイトとして、議会活動報告書をパソコンで作っていたことがあったので「IT業界で職に就ければいいな」と思って参加した次第です。もともとパソコンを使うのは好きでした。

「パソコンの経験があったから、やってみようかなと思った」


黒川 武(くろかわ・たけし)さん 31歳
ジョブトレ・ITコース第6期卒業
大学卒業後、サービス業のアルバイト等を経験したが、正社員には踏み出せなかった。プレップを経て、周囲の目を気にせず仕事ができる状態になることを目標にITコースに参加。現在は、IT企業にてPCキッティング業務に従事。

黒川 僕ももともとは、「育て上げネット」のプレップ(*4というプログラムに参加していました。 そのプログラムが終わるころになっても、すぐに就職活動するには不安が強くて……。そんな気持ちをスタッフに相談していたとき、スタッフから「ITコースがちょうどはじまるよ」という情報をもらいました。 パソコンは、大学在学中にレポートを書いたり、卒業研究の発表とかで多少なりとも経験がありましたし、趣味でもわりと触っていたほうではあったので、「じゃあ、やってみようかな」と思ったんです。

「パソコン関係だったら、働くことへの抵抗感は少ないんじゃないか」


安富 仁志(やすとみ・ひとし)さん 30歳
ジョブトレ・ITコース第3期卒業
大学卒業後、就労経験のないまま、無業状態となる。IT業界のしごと体験にチャレンジしたいと、ジョブトレ・ITに参加。現在は、電車の装置等を製造するメーカー勤務。

安富 私は、たちかわサポステ(東京都立川市の地域若者サポートステーション)に通っているとき、サポステ主催のパソコン講座に参加していました。そんな経験を経て、「パソコンを使った“しごと体験”にもチャレンジしてみないか」とすすめられ、ジョブトレ・IT コースの情報を知って……。せっかくだし、やってみようかと思いました。パソコンにすごく興味があるというわけではなかったのですが、まだパソコン関係の仕事だったら抵抗感は少ないと思ったんです。コミュニケーションが得意ではなかったので、IT系なら人と話さずに集中して仕事ができるんじゃないかなと考えました。

「パソコン講座に通い続けた末にジョブトレのことを知った」


村木 昌司(むらき・しょうじ)さん 22歳
ジョブトレ・ITコース第6期卒業
高校卒業後、高校からの紹介でインターンを行うも、きわめてハードな労働環境のため挫折。「若者UPプログラム」修了後、もっとITを仕事として体験したいとの理由から参加。現在は、WEB制作会社にてテレワークでHP制作を行っている。

村木 自分ももともとは、コネクションズかわさきに通ってまして、パソコン講座を3種類受けました。講師の方の教え方がとてもわかりやすかったので、その講師の「たちかわサポートステーション」のプログラミング講座も2つほど受けました。 それら講座を修了するときに、ジョブトレ・ITコースを知ったのがきっかけですね。

「学生をつづけながら参加できるところが魅力だった」


中村 健(なかむら・けん)さん 21歳
ジョブトレ・ITコース第5期卒業
高校中退後、高卒認定合格。IT技術を身につけたいとの理由から参加。しかし、ジョブトレ・ITコースを通して、IT業界にはあまり向いていないこと、複数の仕事を並行するような職種に向いていることなどに気づいた。現在、インターン先の企業で広報としてアルバイトしながら、通信制大学にも在学中。

中村 もともと進路についてすごく悩んでいて、そのタイミングで、口コミで「ジョブトレ・ITコースというのがあるらしいよ」と聞いたのがきっかけです。IT業界に興味があったのもありますが、そのときは学生だったので、学業と両立できるというところが魅力的でした。

「週に5日もジョブトレに通うことなんでできないと思っていた」

————お話を聞いていたら、みなさん、あっさりと「ジョブトレ・ITコースに入りました」とおっしゃっていますが……。
一同(いっせいに首を振る)
——ということは、ジョブトレ・ITコースに参加することにためらいがあったということですか?

村木僕の場合は、スケジュールに驚いてしまって……。最初に聞いていた話では、週に2、3日ということだったんですけれど、それが2カ月目では週3、4日になり、3カ月目ではほぼ週5日のフル稼働になる。これはすごいハードスケジュールだなと思いました。

黒川 僕と村木さんは同期なんですけれど、この期はゴールデンウィークを挟んだせいでスケジュールが押してしまったようで、余計にハードでした。土曜日も来たことがあったよね。

村木 自分はもともと不登校で、ここに来る前もひきこもり気味だったので、そもそも「通う」ということ自体に抵抗がありました。それまでは外に出ない生活をしていたのに、いきなり毎日は通えないと思ってしまいました。

岩下 あぁ、それはわかる。自分もそうでしたから、すごくわかります。最初にジョブトレに来ることになったとき「とても自分にはできない」と思っていました。でも、がんばって通うことができたので、ITコースはすんなりと通えました。僕は、小学校の低学年から不登校で、中学にはまったく行かず、高校に行ったのも1年だけだったんです。だから、世の中のきちんとしている人と自分はちがうんだと思っていました。 そんな思いを長年にわたって抱えていたので、年数が経てば経つほど相談にも行きづらくなりましたね。頭のなかでずっとぐるぐるとそればかりを考えつづけている状態だったんです。 でも、あるとき、家庭の事情ができて、やむにやまれず、どうしようもなくなって、「えいやっ!」という気持ちでサポステに行きました(笑)。そこからは覚悟を決めたという感じですね。

黒川 私も大学時代、不登校気味で、なんとか卒業だけはさせてもらったんですが、就職活動ができなくて……。就職活動しなくちゃいけないとは思いつつも、「自分はなんで生きなきゃならないんだろう」と考えていました。仕事をするということは、ある意味「生きるため」にすることですよね? 別に「がんばって生きていきたい」とも思っていないのに、なんでイヤな仕事をしなければならないんだろうと思っていました。 私の場合は、親が「行ってみようよ」と気長に声をかけつづけてくれたので、なんとか「育て上げネット」に相談に来ることができたという感じですね。でも、立川駅からここに来るまで、ものすごく足は重かったです(笑)。

安富 あぁ、私も、自分の意志でサポステに行ったわけではなくて、親に連れられて行きました。 親から「行ってみよう」と言われたときは、正直な話、すごくイヤでした。部屋に閉じこもって約束破ってやろうかぐらいは思いましたね(笑)「いつまでもこのままじゃいけない」と自分でよくわかっているんですが、自分ではそれを越えることはできませんでした。親の誘いは少し強引でしたけど(笑)それがきっかけになったのはたしかです。

中村 私はみなさんとちがって、自分から参加を決めました。自分は、高校2年のときに、自分のセクシャリティのことで悩み、精神的にまいってしまって、高校を中退しました。その後は、高卒認定試験を取って、大学に行ったのですが、そこでも高校時代のことを思い出して苦しくなりました。

今だからわかりましたが、自分は「アセクシュアル」(*5)なんです。これは、「他者に対して恒常的に恋愛感情、性的欲求を抱かないセクシュアリティ」のことです。男女問わず人を大切に思う気持ちはあっても、恋愛感情というものがまったくわからない。当時は「自分は世間とちがう。自分は欠落した人間だ」と自分を責めていました。高校と大学はたしかにちがうのですが「恋愛至上主義」みたいな雰囲気に押しつぶされそうで……。また、退学しました。

普通の大学には行けないけれど「勉強したい」という気持ちだけはあったので、通信制大学に入り直したんです。通信制大学に入学した最初のうちはNGOのボランティアをしたり、アルバイトをしたりと、アクティブに活動していたんですが、またため込んでいたものが自分のなかでふくれあがってきて……。自分はなんの資格もないし、セクシャリティのことがあるから、とても普通の就職はできそうにない。それに、自分はまだ学生だから、就労支援機関も相手にしてくれないと思い込んでいました。

そんなとき、口コミで「育て上げネット」の話を聞き、ダメでもともとという気持ちでここに来ました。通信制の学生でも受けられて、しかもITを学べるコースがある。自分の悩みについてもこだわりなく話を聞いてくれた。だから、「ジョブトレのITコースを受けてみたい」と思いました。

コース座談会(その2へ

プロフィールは取材当時のものです。

(*1ジョブトレ: 「育て上げネット」が若者に提供する就労基礎訓練プログラム。そのなかにITコースがあります。
(*2ジョブトレの卒業生親睦会:月に一回開催される、ジョブトレ卒業生が参加できる親睦会のこと。卒業生同士で近況報告したり、スタッフに今の自分のことを相談したり。ジョブトレ現役生が卒業生と交流できる機会でもあります。
(*3若者就労応援パッケージ:「育て上げネット」への寄付によって提供される就労支援パックのこと。
(*4プレップ:若年者社会参加準備支援プログラムのこと。今後の方向性を考えるためのオーダーメイドのプログラムです。
(*5「アセクシュアル」については、中村健さんのこちらの記事に詳しく掲載されています。
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