トピックス 若年無業者の実態

2015年03月10日

若年無業者における物質的格差の実態
~3人に1人が自分で使えるPCを持っていない~


若年無業者のうち、求職活動を行っていない若者ではPCスキルが低い傾向がある。PCの保有率、スーツや携帯電話の所有率にも同様の傾向がある。PCスキルとPCの保有率にも関連があることから、支援活動を行う上では、就職活動に必要な物質的格差も意識することも重要であるようだ。

本トピックスでは、NPO法人育て上げネットが実施した調査研究『若年無業者白書~その実態と社会経済構造分析~』を基に、無業の若者について
・求職活動を行っている「求職型」
・就業希望はあるも求職活動は行っていない「非求職型」
・就職希望を表明していない「非希望型」
に分類した調査研究結果をご紹介しています。詳しい定義はこちらをご参照ください。

若者が無業状態におちいり、社会的な接点を失ってしまう原因として、一般的には、「精神面」が強調されることが多いように思われる。例えば、「精神的に甘いのだ」というような言葉や、「怠惰なだけではないか」というような意識である。
しかし、今回の『若年無業者白書』による調査結果は、社会的な接点を失う背景にはそうした「精神的側面」だけではなく、「物質的側面」も重要な要因である可能性を示唆している。
例えば、就業に必要とされるPCスキルのデータをみると、非希望型(無業者のうち、就業希望を表明していない個人)では特にPCスキルが低く、WordやExcelを使える割合は2~3割程度にとどまる。

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続いて、PC保有率をみると、特に非希望型についてPCを所有している割合が低い。

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併せて、PCスキルとPC保有状況との関係を見ると、「自宅にPCがない」「PCはあるが自分が使えるPCがない」場合においてPCスキルが低く、スキル0(メール・ウェブ・文書作成・表計算のいずれもできないと回答)の割合が5~6割を占める。

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※1メール、2ウェブ、3文書作成、4表計算をPCスキルと考え、それぞれを1ポイントとして集計している。「スキル3以上」は1~4のうち、3つ以上のスキルを持っていることを表す。「スキルなし」は1~4のうちいずれも「できない」と答えた人を表す。

最近の求人では、文書作成や表計算のソフトが使えることを条件としているものが多い。PCスキルがあることで、就職の幅が広がることを考えると、「自分が使えるPCを持っていること」が就労に必要な前提条件となってきていると推察される。
併せて、就職活動に必要となるスーツ・携帯電話の保有率も、非求職型・非希望型では特に低い傾向にある。

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以上のように、若者無業者のなかでも特に「非求職型」「非希望型」では、基本的なPCスキルやスーツ・携帯電話といった就職活動に必要なリソースを持っていない割合が高く、こうした物質的格差が求職行動を起こす上での阻害要因となっている可能性もある。支援活動を行う上では、就職活動に必要な物質的格差も意識することが重要ではないだろうか。

執筆:育て上げリサーチ
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